復讐劇の形をした自営業の物語
表向きは父を亡くした青年の復讐劇ですが、実際に画面を埋めるのは小さな店を一つ回すことの具体的な難しさです。客のつかない立地、人が居つかない厨房、噂ひとつで揺れる売上といったものが物語を動かします。復讐という大きな目標より、こうした小さな問題の方が頻繁に主人公の前に立ちはだかるため、ジャンル作品というより職業ドラマに近く読めます。
ウェブトゥーン原作で、日本でリメイクまでされた作品です。この物語が国境を越えて通用した理由を整理しました。
表向きは父を亡くした青年の復讐劇ですが、実際に画面を埋めるのは小さな店を一つ回すことの具体的な難しさです。客のつかない立地、人が居つかない厨房、噂ひとつで揺れる売上といったものが物語を動かします。復讐という大きな目標より、こうした小さな問題の方が頻繁に主人公の前に立ちはだかるため、ジャンル作品というより職業ドラマに近く読めます。
ウェブトゥーンは主人公のモノローグで信念を直接語る比重が大きい一方、ドラマは同じ内容を人物同士の対立場面に置き換えた部分が多くあります。媒体が変わることで「説明」が「衝突」に翻訳されたわけです。原作を先に読んだ人とドラマから入った人が、同じ人物を違う形で記憶するのはこのためです。
店を大きくしようとする側と、それを阻む大企業という構図は、どの国でもすぐに理解できます。背景説明をほとんど必要としない葛藤なので、字幕だけでも入りやすいのです。日本で舞台を六本木に移したリメイクが成立したのも、物語の骨格が特定の地域に縛られていないからです。
原作ウェブトゥーンを描いたチョ・グァンジンが、ドラマの脚本も自ら手がけました。原作者が脚色まで担ったことで、大きな筋と人物の性格は原作と同じでありながら、先に触れたように表現の仕方はドラマという媒体に合わせて変えられています。演出は『雲が描いた月明り』のキム・ソンユン、主演はパク・ソジュンとキム・ダミです。ウェブトゥーンですでに人気を得ていた人物を実写にする作業だったため、配役や外見の再現は放送前から話題になっていました。
本作を少し違った角度で楽しむ方法は、主人公の店をひとつの事業として追いかけることです。どこに店を構えるか、どんな料理で勝負するか、誰を従業員に選ぶか、悪い評判が広まったときにどう対応するか。こうした課題が回ごとに一つずつ出てきます。もちろん劇的な効果のために誇張や省略が多いので、実際の開業の手本にはなりません。ただ、小さな店がぶつかる問題の種類をざっと眺めるにはなかなか役に立ち、その問題に人物たちがそれぞれの性格どおりに反応する様子が物語の面白さを生んでいます。
主人公ひとりの復讐劇だったなら、物語はすぐに単調になっていたでしょう。本作は、違う背景と事情を抱えた人たちが一人また一人と店に集まり、チームになっていく過程を大きな軸に据えています。社会で居場所を見つけられなかった人物が店の中でそれぞれの役割を得ていく様子は、復讐という目標とは別に、視聴者が応援したくなる理由を生み出しています。そのため脇役一人ひとりの事情が描かれる回を飛ばすと、チームの結束がなぜ大切なのかがあまり伝わってきません。初めて観るときは、主人公ひとりではなくこのチーム全体を主役だと思って追いかけてみるのもよい方法です。
2022年に日本で作られた『六本木クラス』は、舞台をソウルの梨泰院から東京の六本木に移し、小さな店と巨大な外食企業の対立という骨格はそのまま受け継ぎました。両方を観ると、同じ物語が別の社会の話し方や職場の文化、人との距離感の中でどう置き換えられるのかを確かめられます。どちらが優れているかを決めるより、原作の持つ普遍的な構図が何で、それぞれの国の版が何を足し、何を削ったのかを比べるのが面白い楽しみ方です。
序盤の数話は人物の過去を積み上げるために使われ、展開が遅く感じられることがあります。店が開き、競争が始まる地点から加速する構造なので、序盤のゆっくりした呼吸を前提に見ると印象が変わります。